| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) M02-05  (Oral presentation)

高知県における外来海産魚タイリクスズキと在来魚スズキとの交雑
Hybridization between introduced Chinese seaperch and native Japanese seaperch in Kochi Prefecture

*豊澤拓海, 中山耕至(京都大学)
*Takumi TOYOSAWA, Kouji NAKAYAMA(Kyoto Univ.)

 タイリクスズキLateolabrax maculatusは,主に1990年代から2000年代前半にかけて自然分布域の中国大陸や台湾から養殖用として卵・稚魚が数多く輸入された外来海産魚である.1992年以降,養殖生け簀から逸出したとみられる個体が西日本を中心に野外で採集されるようになった.本種の国内での再生産や定着は確認されていないが,近縁な在来種であるスズキL. japonicusと飼育下で交配可能なため(Lee et al., 2000),遺伝的撹乱が生じている可能性がある.山田(2014)は,マイクロサテライトDNAマーカー9座位を用いて交雑個体の探索を行い,兵庫・高知・山口・佐賀県で両種の遺伝的要素を併せ持つ個体を確認した.しかし,マーカー数が限られていたため,これらが外来個体との交雑に由来するものかどうかの確証が得られなかった.そこで本研究では,より詳細な検討のためにゲノムワイドSNPを用いた交雑個体の再探索と交雑世代の推定を行った.
 材料には1994年から2025年にかけて日本海(京都,鳥取,福岡,佐賀)・瀬戸内海(兵庫,山口)・太平洋(宮城,徳島,高知)・有明海から採集したスズキ189個体と韓国・中国大陸沿岸から得られたスズキおよびタイリクスズキ計50個体を用いた.dpMIG-seq法により得られたSNPを用いて,STRUCTURE解析による交雑個体の探索と,NEWHYBRIDS解析およびトライアングルプロットによる交雑世代の推定を行った.その結果,2013年の高知県のサンプルから,両種の遺伝的要素を併せ持ち,かつ交雑世代の浅い個体が複数検出された.高知県はタイリクスズキの自然分布域とは離れているうえ,有明海を除く他の地域では同様の個体が見出されなかったことから,これらは人為移入されたタイリクスズキによる交雑と推定された.同地域における遺伝的攪乱に関し今後のモニタリングが必要と考えられる.


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