| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) M03-05  (Oral presentation)

農地・都市景観でのクマの出没・遭遇リスクを景観連結性に基づいて予測する
Predicting bear intrusion and encounter risk in agricultural and urban landscape based on landscapes connectivity

*広部康太(北海道大学), 山浦悠一(森林総合研究所), 先崎理之(北海道大学), 深澤圭太(国立環境研究所)
*Kota HIROBE(Hokkaido Univ.), Yuichi YAMAURA(FFPRI), Masayuki SENZAKI(Hokkaido Univ.), Keita FUKASAWA(NIES)

 大型の野生動物の個体数回復に伴い、人間と野生動物の軋轢が深刻化し、その低減が世界的な課題となっている。野生動物が人間との軋轢をもたらすまでにどのように人為景観に移入するのかという過程を、個体群レベルおよび景観スケールで解明することは、この問題の解決に向けた有望なアプローチである。一方で、野生動物の移動パターンは個体差に左右され、人為・自然景観でも異なる。そのため、野生動物の移入過程は、人為景観に実際に移入し、軋轢を起こしている複数個体の実証データに基づいて解明することが望ましい。

 そこで本研究では、富山平野を対象にツキノワグマの密度と遭遇頻度の統合モデリングを行った。ツキノワグマが都市・農地景観に侵入する過程を反応拡散方程式で表現し、森林から人為景観への個体の流入と死亡による定常状態の下での密度を予測した。さらに局所的な密度が人口密度によって遭遇(目撃)頻度に変換される観察過程モデルを導入し、富山県で蓄積されてきたツキノワグマの目撃通報に基づいて森林、農地、都市間のツキノワグマの移動のしやすさ(透過性)も推定した。また、予測された透過性を変化させるシナリオ分析を行ない、人為景観内での遭遇総数の低減の程度を予測した。

 モデル解析の結果、ツキノワグマの透過性は森林が最も高く、農地と都市がそれに続いた。この結果は、河畔林が森林から人為景観に伸びる形態であることと密度の予測地図を合わせると、ツキノワグマが森林から河畔林を伝って人為景観に移入することを示す。遭遇頻度はクマ密度と人口が高い地域で最も高く、人口の低下に伴って低くなると予測された。

 シナリオ分析の結果、森林と隣接する断片林にフェンスを設立して通行不可にすると、人為景観内の遭遇総数が最も少なくなった。河畔林の一部や森林の透過性を低下させるシナリオ、クマの個体数を半減させるシナリオも遭遇総数の低下に一定の寄与をもたらすと予測された。


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