| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) M03-06 (Oral presentation)
生物保全において、種の分布を空間的に把握し、保全優先地域を抽出することは基盤的課題である。希少種や絶滅危惧種では出現記録がそもそも少ないことに加え、精緻な位置情報が撹乱防止の観点から非公開となる場合が多い。これらの秘匿は重要な保護策である一方、広域スケールでの現状把握や将来予測、優先度づけにおける不確実性を増大させ得る。近年は市民科学データや公開環境データの整備が進み、機械学習を用いた種分布モデル(SDM)が、データ制約下でも再現可能な推定枠組みとして保全分野で広く活用されている。本研究では、ニホンイヌワシ(Aquila chrysaetos japonica)を対象に、亜種の公開可能な出現データを収集・整備し、日本全国スケールで潜在生息適地を推定した。説明変数として、気候・地形・土地利用に加え、里山指標を統合した。モデルの作成においてはMaxEnt・Random Forest等の複数アルゴリズムでアンサンブルSDMを構築し、空間ブロック交差検証で評価した。さらに、MESS解析により環境外挿性を診断した。加えて、得られたSDMマップを先行研究に基づく既存の定性的なマップと比較し、xAI(LIME)により局所的な環境要因の寄与を可視化することで、適地/不適地を分ける要因の解釈性を補強した。推定の結果、モデル間でAUC 0.78–0.83 の性能が得られ、十分な予測精度が確認された。高適性域は全国スケールで抽出され、全国傾向としては地形条件が一貫して寄与する一方、LIMEによる地点レベルの分析では地形に加えて里山モザイク指標や土地利用構成が予測を押し上げる・押し下げる主要因として抽出された。以上より、本研究は、秘匿性の高い希少種に対しても公開データに基づき「適地」と「不確実性」を同時に提示し、現地調査の優先順位づけや将来的なデータ更新に耐える意思決定支援の枠組みを提案する。