| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) M03-07 (Oral presentation)
人口減少や高齢化に伴い耕作放棄が進む中、スマート農業技術の導入により農地利用を維持する試みが進められている。耕作放棄の拡大は生物多様性と生態系サービスを大きく変化させることが将来シナリオ分析を通じて明らかにされてきたが、その背景にある人口動態や技術革新等の社会経済的要因は定量的に考慮されてこなかった。本研究は、社会経済モデルを統合した将来シナリオ分析により、人口減少下でのスマート農業の普及が景観パターンと生態系サービスに与える影響を定量的に評価した。新潟県佐渡市を対象に、2050年までに①スマート農業が普及しない、②スマート農業が普及し農地を平野部に集約する、③スマート農業が普及し農地を平野部と山間部に分散して残す、という3つのシナリオを作成し、各シナリオの農地面積を産業連関分析理論に基づく社会経済モデルであるExtended SnapShot toolを用いて計算した。次に、衛星画像分類により作成した2014、2024年の土地利用を基に、TerrSet LiberaGIS Land Change Modelerを用いて、農地から草地の土地利用変化予測モデルを構築し、各シナリオの土地利用を推定した。これを基に、炭素貯留、水供給、窒素流出、農地景観の眺望、さとやま指数を評価した。その結果、農地面積は全てのシナリオで2024年より減少したが、②、③でより多くの農地が維持された。生態系サービスは、全てのシナリオで水供給、炭素貯留が増加、窒素流出量が減少(水質負荷を低減)、景観の眺望が低下したが、②、③では変化が小さかった。さとやま指数は、③で特に大きく増加した。本研究は、スマート農業の普及が農地の維持を通じて、耕作放棄による生態系サービスの変化を抑制するとともに、特に山間部を含む広範なスマート農業の導入は景観のモザイク性を高めることで生物多様性保全に貢献する可能性を示唆している。