| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) M03-08 (Oral presentation)
水田は湿地性生物に重要な生息環境を提供し,我が国の生物多様性保全に大きく貢献している。しかし近年,耕作放棄や圃場整備による環境改変に加え,気候変動や外来種の侵入などの複合的要因により農村生態系の脆弱化が懸念されている。複雑な環境変動下では,単なる種組成の把握にとどまらず,群集の安定性を定量化し,その規定要因を明らかにすることが重要となる。しかし,群集構造の安定性解析には多大なデータと収集労力が必要であった。本研究では,栃木県におけるほぼすべての多面的機能支払組織で実施されている「田んぼまわりの生きもの調査」の生物データに着目し,エネルギー地形解析(ELA)により安定性構造を定量化した。加えて,安定性を規定する生物種および環境要因を明らかにし,安定性と人為的攪乱要因の関係を検討した。
解析には2009年に200組織で得られた生物種31種の在・不在データを用いた。環境要因として気象(年平均気温・年積算降水量)および土地利用(土地利用細分メッシュデータ),人為的攪乱要因として水田管理方法(圃場整備後経過年数,肥料および農薬使用状況,水路形態)を用いた。ペアワイズ最大エントロピーモデルを推定し,構築されたエネルギー地形から群集状態の各安定状態への収束確率を推定した。生物種の存在量や環境条件を操作したシナリオ比較により,重要種および重要環境要因を評価した。また,安定性指標を目的変数とする一般化線形混合モデルにより,人為的攪乱要因の影響を検討した。
結果として,水田生態系は多安定構造を示した。主要な安定状態は高い種多様性を有し,外来種は含まれなかった。コオイムシは安定構造に強く関与し,周囲の水田面積および降水量も重要であった。さらに,農薬散布範囲が安定性に有意な影響を及ぼした。