| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) M03-09 (Oral presentation)
新潟県上越市は国内有数の地すべり多発地域で、多くの棚田が成立している。地すべり地は、水環境の多様性、地形的複雑性、地塊ごとの成立年代の違い、植生の多様性といった特徴を有し、生物多様性が高いとされる。本研究では、これらの要因を空間指標として定量化し、農業用ため池における水生生物多様性との関係を検証した。
上越市内の農業用ため池40地点を対象に、たも網による掬い取り調査と水質・植生などの環境調査を行った。GISを用いて調査地点から半径1km以内の地すべり移動体面積を算出した。さらに同範囲の地形要因として湿潤指数TWI、起伏指数TRI、位置指数TPIを算出し、主成分分析により主成分を抽出した。また、同範囲の景観構成要因として植生図および土地利用図からその多様度を算出した。解析では、ため池ごとの種数を目的変数とするGLMを構築し、①池内環境要因のみ、②池内環境要因と地すべり移動体面積、③池内環境要因と地形・景観要因を説明変数とする3モデルを作成し、AICで比較した。
本調査では計118種の水生生物が確認された。AICは②<③<①となり、ため池周囲の地すべり移動体面積が大きいほど種数が増加する傾向が認められた。地すべり移動体面積の代わりに地形・景観要因を用いた③も池内環境要因のみの①よりAICが低く、これらの要因が地すべり地の環境特性を反映していることが示唆された。さらに、TRIと相関の高いPC1は正に有意であり、起伏の大きさという地すべり地の特徴が種数増加に寄与している可能性が示された。
地すべり地では、起伏の大きい地形が大小さまざまな水域や湿地を形成しており、水生昆虫やカエル類などにとって、時空間的な避難場所として機能しうる。地すべり地は、こうした地形的複雑性を持つことで多様な水辺環境を生み出し、水生生物の存続や再定着を支えることで、多様性の向上に寄与していることが示唆された。