| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) M03-11  (Oral presentation)

AI-Based Analysis of Changes in Homestead Woodlands in the Tonami Plain, Toyama, Japan

*Natsuko KAWAHIGASHI, Takeshi ISE(Kyoto University)

富山県小矢部市・高岡市・砺波市・南砺市に広がる砺波平野は、水田景観の中に民家が点在する特徴的な散居景観で知られている。各民家を取り囲む屋敷林は、スギ・ケヤキ・カキ・サザンカなど多様な樹種で構成され、環境緩和機能や木材・食料・燃料の供給など様々な機能を担ってきた。しかし近年、生活形態や生業の変化、農業形態の変化、維持費用の増大などを背景として、砺波平野における屋敷林の減少が懸念されている。
屋敷林の減少は地域の伝統的景観や地域文化の喪失につながる可能性があるが、そのような屋敷林の変化を広域かつ長期にわたって定量的に把握した研究は限られている。そこで本研究では、深層学習AI(classification, 画像分類)を応用し、航空写真を用いて砺波平野の屋敷林の変化を定量的に明らかにすることを目的とした。
砺波平野の面積は約220 km2に及び、航空写真の目視による調査は現実的ではない。そこで、本研究では深層学習AIを応用した屋敷林変化調査の手法構築を行った。まず、小矢部市・高岡市・砺波市・南砺市を対象として、国土地理院が提供する地理院タイルから1975年および2019年の航空写真を取得した。これらの画像から「屋敷林」と「その他」の領域について教師データを作成し、「こま切れ画像法(Chopped Picture Method)」を用いて植生を識別する深層学習モデルを構築した。構築したモデルを用いて対象地域全域の屋敷林を抽出し、識別結果をQGIS Desktop 3.28.11に取り込み、市および字単位で屋敷林の面積を算出した。
解析結果から、対象地域全域では44年間で屋敷林面積の28.4%が減少していることが明らかとなった。砺波市および南砺市では減少率が比較的低く、行政による屋敷林保全の取り組みが屋敷林の維持に一定の影響を及ぼしている可能性が示唆された。
本研究で構築した手法は、屋敷林の広域モニタリングや保全施策の検討に資する基礎的知見を提供するものと期待される。


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