| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) N01-01  (Oral presentation)

歴史の古い草原の根系が表層崩壊防止機能に与える影響-多地点解析-
The Influence of Old-Growth Grassland Root Systems on Shallow Landslide Prevention: A Multi-Site Analysis

*寺嶋悠人(筑波大学・山岳セ), 入江瑞生(筑波大学・山岳セ), 市野祥子(筑波大学・山岳セ), 野口幹仁(京都大学), 平山楽(神戸大学), 冨髙まほろ(筑波大学・山岳セ), 浅田寛喜(熊本大学), 廣田充(筑波大学・山岳セ), 丑丸敦史(神戸大学), 黒川紘子(京都大学), 加藤拓(東京農業大学), 田中健太(筑波大学・山岳セ)
*Yuto TERASHIMA(MSC, Univ. Tsukuba), Mizuki IRIE(MSC, Univ. Tsukuba), Sachiko ITINO(MSC, Univ. Tsukuba), Mikihito NOGUCHI(Kyoto Univ.), Gaku HIRAYAMA(Kobe Univ.), Mahoro TOMITAKA(MSC, Univ. Tsukuba), Hiroki ASADA(Kumamoto Univ.), Mituru HIROTA(MSC, Univ. Tsukuba), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.), Hiroko KUROKAWA(Kyoto Univ.), Taku KATO(Tokyo Univ. of Agriculture), Tanaka KENTA(MSC, Univ. Tsukuba)

気候変動の進行に伴う災害リスクの増加が国際的な課題となる中、生態系を活用した防災・減災が注目されている。植生は根系による土壌せん断強度の増強効果をとおして表層崩壊を抑制する。森林根系の表層崩壊抑制機能については多くの研究事例が報告されている一方、継続年数に伴い根系量の多い多年生植物種が増加することが知られている草原では、根系量と表層崩壊抑制機能との関係を評価した研究はほとんどみられない。
そこで、根系量と表層崩壊抑制機能の関係を明らかにするため、長野県・菅平高原スキー場で、古草原(継続年数300年以上)10サイト、の新草原(継続年数70年未満)9サイト、森林19サイトを対象に、維管束植物種数や斜度、斜面方位を計測した。また、直径5∼8 ㎝・深さ30 ㎝の表層土壌コア試料を採取し、深さ方向5㎝ごとの体積当たりの乾重根密度を比較した。また、全調査サイトから植生タイプごとに各5サイトを選定し、縦横20 ㎝、深さ10 ㎝の表層土壌供試体を採取し、1 ㎜/ minの速度でせん断変位が35 ㎜までサンプル下部を横にずらしていく現場一面せん断試験を実施した。調査の結果、表層から0∼15㎝の土壌深での根密度は古草原≧新草原>森林、表層から15∼30 ㎝では森林>古草原=新草原であり、表層0∼30 ㎝全体の根系量は新草原より古草原が多かった(p < 0.05)。一般化線形モデル解析の結果、根系量を説明する最良モデルでは斜面方位のみが有意であり、そのほかに斜度、多年生草本割合が選ばれた。また、せん断強度の最大値は古草原>新草原>森林であり、せん断強度を説明する最良モデルには多年生草本割合のみが選択された。このことから、根系量は斜面方位で決定されるが、草原は継続期間による多年生草本の増加が根系量に影響する可能性、せん断強度には多年生草本が持つ根系形質が影響する可能性が示唆された。そのため、継続年数の長い草原を保全することは生態系サービスを維持する事にもつながると考えられる。


日本生態学会