| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) N01-03 (Oral presentation)
樹木群集の機能形質が森林の地上部バイオマス動態に影響を与える可能性があることから、樹木群集の機能形質を用いてバイオマス量の変化を予測できると考えられる。しかし、各森林階層(林冠層、亜林冠層および下層)での地上部バイオマス動態の変化、およびその生態学的メカニズムに注目した研究はまた少ない。そのため本研究では、日本に多く見られる二次林と老齢林の樹木群集を対象に、各階層における機能形質の特徴を把握し、地上部バイオマス動態との関係を解明することを目的とした。本研究は、愛知県の瀬戸市・海上の森の二次林と段戸モミ・ツガ希少個体群保護林の老齢林において実施した。2015年から2020年までの毎木調査および機能形質データを用いて、各階層の地上部バイオマスの成長および新規加入による増加量、死亡による減少量を算出し、機能形質の群集加重平均値を定量化した。また、地上部バイオマス動態と機能形質との関係を解明するために、一般化線形混合モデルを用いて解析を行った。その結果、両調査サイトとも垂直方向で同様な地上部バイオマス動態パターンを示すことが確認された。しかし、垂直方向での機能形質のパターンは調査サイト間で大きく異なり、遷移段階や微環境条件などに対する適応が温帯樹木群集の各階層の機能形質と関係することが示唆された。また、林冠層および亜林冠層において、材密度は成長による地上部バイオマス増加量に正の影響があることを示した。下層においては、比葉面積が成長による地上部バイオマス増加量と死亡による地上部バイオマス減少量に有意な正の影響を与えた。本研究は、機能形質と地上部バイオマス動態との関係が垂直方向で変化することを示し、機能形質が樹木の垂直的な構造形成プロセスにおいて重要な役割を果たすことを明らかにした。