| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) N01-04 (Oral presentation)
生物の競争関係とその非生物的環境による変遷は、生物種の適応度、他種との共存の可能性、ひいては種の空間・地理的分布を決定づける重要な要素である。しかし、異なる環境下での競争の強さと個体群動態の相互作用が個体群の存続可能性に及ぼす影響を実証的に解明することは困難であることが多い。そこで本研究では、降水量が植物の競争・共存に及ぼす影響を、温室実験を通して検証した。地中海性気候の北米西部に生息する冬型一年生植物 Festuca microstachys(イネ科)と Plantago erecta(オオバコ科)を、その分布域内の降水量を再現した給水処置、並びに異なる個体密度(同種または異種)の下で栽培し、競争モデルのパラメータを推定した。個体レベルの競争係数(per capita competition)は種内・種間競争ともに給水量の減少とともに増大する傾向を示した。その反面、個体群レベルでは居住種との競争(total competition)による侵入増殖率の減少効果が、比較的多い給水量の下で最大化され、先住効果も見受けられた。この個体および個体群レベルでの競争の強さの相違は両種の種子生産量の非対称性を反映しており、結果として種間競争係数が最大である乾燥環境において共存の可能性が最も高くなった。総じて、適応度の差によって個体あたりの競争関係と群集全体で捉えた競争関係に差異が生じることを実証した。異なる環境における競争の重要性およびその結果を正確に予測・解析するためには、これらの競争関係の多面性に留意すべきである。