| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) N02-02  (Oral presentation)

鳥類の翼筋肉とその操縦性:種間比較の視点から
Avian Wing Muscles and Maneuverability: A Comparative Perspective across Species

*簑島あすか(千葉大・院・融), 村上正志(千葉大・院・理)
*Asuka MINOSHIMA(Grad. Sci. Eng., Chiba Univ.), Masashi MURAKAMI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

地球上には多様な生物が存在しており、それぞれが生息環境に応じた生態を示す。鳥類においても生息環境に適したさまざまな行動や機能がみられるが、鳥がもつ最も重要かつ特徴的な器官は翼であり、その形態と機能との関係は興味深い。本研究では、翼がもつべき機能として飛行中に障害物を回避する能力としての操縦性を検討する。ここでいう「操縦性」とは翼の形状を自在に変形できる能力を指す。鳥の能動的な翼変形は「翼の曲げ伸ばし」、「翼のひねり」、「手首の曲げ伸ばし」という3つの変形の組み合わせからなると考えられ、これらの変形の組み合わせには肘と手首の連動運動が不可欠である。この連動運動に関わる筋肉として biceps slip(slip)と tensor propatagialis brevis(TPB)という2つの筋肉に注目する。これらの筋肉はどちらも肘を曲げながら手首を展開するという動作に関わることが分かっているが、その詳細な機能は不明である。そこで、本研究では鳥の障害物回避に着目し、利用空間として複雑さの異なる生息地や飛翔形態などの生態と、slip および TPB の有無や形状との関係を種間比較により検討した。祖先形質推定の結果、 slip と TPB は独立にそれぞれ複数回獲得されたことがわかった。また、各種の生態カテゴリーと発達の度合いの関係を解析したところ、林床や森林、市街地に生息する鳥は用いたすべての種で slip あるいは TPB が発達していた。TPB の形を解析したところ、体重の大きい鳥(草地に多い)において形状が太くなり、森林や市街地に生息する鳥や渡り鳥では形状がより曲がることがわかった。系統を考慮した解析では、体重の大きい鳥でTPBの形状が太くなるという効果のみがみられた。


日本生態学会