| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) N02-06 (Oral presentation)
希少種の保全において,各局所個体群の個体数および群間の移住率は重要な情報であるが,開放水域に生息する水生生物では個体数の推定は一般に困難であり,また群間で遺伝的分化が小さい場合には移住率を推定することもできなかった.主に宮崎県と高知県に生息する希少大型海産魚のアカメは,高知県では県西部と県中部に集中して分布しているためそれぞれが局所個体群を構成していると思われるものの,上記理由により各群の現存個体数や移住率に関する情報は得られておらず,保全上の障害となっている.しかし,近年発展した個体間の血縁情報に基づく手法,すなわち血縁ペアの出現率により繁殖個体数を推定するClose Kin Mark Recapture法(Bravington et al., 2016)および異なる群間での血縁ペア検出により移住率を推定するAkita(2022)のモデルを用いればそれらを解明できる可能性があるため,本研究で高知県のアカメに対する適用を試みた.
2017年から2019年にかけて,県西部と県中部で当歳魚を採集し,鰭の一部を切除後に放流した.得られた2地点・3年級群の各38-95個体,計506個体の鰭試料から全ゲノムリシーケンスを行い,ソフトウェアColony2.0を用いて半同胞ペアを検出した.その結果に基づき繁殖個体数を推定したところ,県西部・県中部ともに2000個体未満となり,海産魚としては個体群サイズが極めて小さいことが明らかとなった.2地点間の半同胞ペアは同一年級内においても異なる年級間においても見出され,前者は卵仔魚の浮遊分散による移住の,後者はそれに加えて繁殖個体の年度間の能動的移動による移住の情報が含まれていると考えられた.そこから繁殖個体の移住率を推定したところ,県西部・県中部それぞれで10%未満という結果が得られた.高知県のアカメは,個体数は少ないものの,卵仔魚の浮遊分散および繁殖個体の移動により局所個体群間の遺伝的交流はある程度保たれていると考えられる.