| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) N02-09  (Oral presentation)

2024-2025年の八ヶ岳東麓におけるキシャヤスデ群遊パターンの時間的空間的な変動
Spatio-temporal outbreak patterns of periodic train millipede during 2024-2025 on Yatsugatake mountains, central Japan

*清野達之(筑波大学八ヶ岳演習林), 吉田智弘(東京農工大学), 金子信博(島根大学)
*Tatsuyuki SEINO(Univ. Tsukuba), Tomohiro YOSHIDA(TUAT), Nobuhiro KANEKO(Shimane Univ.)

2024年から2025年にかけて,八ヶ岳東麓におけるキシャヤスデ群遊パターンの時間的空間的な変動を調査した.キシャヤスデは同一世代だけによる8年周期の生活史を有し、8年目の晩夏から晩秋まで日本の中部山岳域で群遊が観察される.特に7齢時の群遊期と8齢時の産卵期は,地表部で活動する.この群遊のパターンの理由とメカニズムを探るために,まずは群遊期と産卵期での行動の違いを調査した.
野外調査は筑波大学山岳科学センター八ヶ岳演習林で行なった.八ヶ岳演習林(80 ha)は,ミズナラ二次林とカラマツ人工林から構成されている.八ヶ岳演習林では,これまでにもキシャヤスデの群遊が観測されている.林内の中央部に47個のピットフォールトラップを設置し,2024年の群遊期は10月18日から11月22日まで,産卵期には5月9日から9月9日まで,約一週間間隔でピットフォールトラップによって捕捉されたキシャヤスデの個体数をカウントした.
調査の結果,2024年の群遊期では10月で最も多く個体が捕捉され,11月上旬には観察されなくなった.一方、2025年の産卵期では,5月下旬から捕捉され始め,7月末には観察されなくなった.群遊期と産卵期の個体数は,翌年の産卵期では群遊期の1/4ほどに減少した.出現したキシャヤスデの雄雌比は,群遊期では1.1:1であったが,産卵期では,ほぼ1:1になった.八ヶ岳演習林内では,群遊期と産卵期の両方で,カラマツ人工林に偏った群遊パターンを示し,ミズナラ二次林では,群遊がほとんど観察されなかった.特に群遊期では,1週間で100 mほどの群遊の移動がみられた.
今回の結果から,八ヶ岳演習林内の細かなスケールの中でも,群遊に時間的空間的な偏りが生じていた.今回の群遊パターンは,植生の違いによる餌資源(葉リター)の違いが,キシャヤスデの活動・行動に影響を与え,結果として出現パターンが規定された可能性がある.


日本生態学会