| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) N02-10  (Oral presentation)

カタクチイワシ仔魚における成長と形態発達の個体間変異が摂餌特性に及ぼす影響
Effects of individual variation in growth and morphological development on feeding performance in Japanese anchovy larvae

*田中翔大(東大院農), 村山大知(東大院農), 中村政裕(水産機構技術研), 米田道夫(水産機構技術研), 高須賀明典(東大院農)
*Shota TANAKA(Tokyo Univ.), Daichi MURAYAMA(Tokyo Univ.), Masahiro NAKAMURA(Japan FRA), Michio YONEDA(Japan FRA), Akinori TAKASUKA(Tokyo Univ.)

 魚類では、体の成長速度や形態発達の違いは、餌資源の利用様式や摂餌特性の個体差を生み出す重要な要因である。しかし、成長と複数の形態形質を同時に扱い、それらが摂餌特性に及ぼす影響を検証した研究は限られる。特に野外環境では、個体が経験する環境条件や実際に摂取した餌を正確に把握することが難しく、成長・形態と摂餌特性との関係を切り分けて評価することが困難である。本研究では、卵から同一条件下で飼育したカタクチイワシEngraulis japonicus仔魚を用いた摂餌実験を行い、成長–形態形質間の関係を整理するとともに、それらが行動を介した摂餌特性に及ぼす影響を検証した。
 2023年10~12月および2024年11~12月に採卵・飼育したカタクチイワシ仔魚を用いて摂餌実験を行った。飼育期間中に、重複する体長範囲で日齢の異なる仔魚を抽出することで、成長速度の異なる個体を実験に供した。摂餌実験は22℃で実施し、小型容器に仔魚を収容後、サイズの異なるアルテミアをそれぞれ同数添加し、5分間摂餌させた。実験終了後、摂餌に関連すると考えられる顎長・眼径・消化管高を計測した後、消化管中の餌生物を計数・計測した。以上のデータに基づき、仔魚の体長・成長速度・各形態サイズ間の関係と、それらが餌個体数・餌サイズに及ぼす影響を検証した。
 仔魚の成長速度および各形態サイズはいずれも体長と正の関係にあった。一方、体長の影響を除くと、成長の遅い個体ほど各形態のサイズは大きかった。この関係を反映して、体長あるいは各形態のサイズが大きい個体ほど、摂餌個体数および餌サイズはいずれも大きかった。また、同一体長内では、成長の遅い個体ほどより大型の餌を利用していた。以上の結果から、仔魚の成長–形態発達様式には個体間変異が存在し、それが行動を介した摂餌特性の違いを生み出していることが示された。これらの個体差は、餌環境の変動が大きい海洋環境下において、餌資源利用の多様化に寄与する可能性がある。


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