| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) Q02-03  (Oral presentation)

表面微地形による外来種・在来種フジツボの加入ニッチおよび個体群動態への影響
Effects of microtopography on recruitment niches and population dynamics of invasive and native barnacles

*姚遠(北海道大学), 野田隆史(北海道大学), 仲岡雅裕(北海道大学), Joshua MADIN(University of Hawaii at Manoa)
*Yuan YAO(Hokkaido Univ.), Takashi NODA(Hokkaido Univ.), Masahiro NAKAOKA(Hokkaido Univ.), Joshua MADIN(University of Hawaii at Manoa)

近年、海水温上昇に伴う沿岸生態系の変化は、しばしば種の分布や個体数の変動として議論されるが、これらのパターンは、より初期の群集集合プロセス、特に幼生加入と定着段階に起因すると考えられる。幼生の加入は、その後の個体群動態や群集構造を予測するだけでなく、種の資源選択性や群集集合の決定性を理解する上でも重要である。もし気候変動が、加入時における微小環境資源への選択性を変化させるならば、群集集合のルール自体が変化する可能性がある。しかし、環境変化が生物の資源選択性を変化させるかどうかについては、長期的な実証研究が不足している。岩礁潮間帯固着生物は移動できず、空間という共通資源を利用するため、本問題を検証するモデルシステムとして適している。本研究では、海水温変動が優占固着生物の加入および微地形選択性に与える影響を評価することで、群集集合初期過程に対する気候変動の影響を目的とした。2012~2025年にかけて毎年実施した除去実験により、北海道東部太平洋沿岸の岩礁潮間帯における2種のフジツボ(在来種:キタイワフジツボ、外来種:キタアメリカフジツボ)の幼生加入量を測定した。さらに、3D写真測量により岩石表面の微地形を定量化し、粗度、複雑度、起伏度を算出した。これらの指標を用い、①異なる微地形条件下において幼生加入に安定した選択性が存在するか、②その選択性の年変動が群集集合プロセスに変化をもたらすか、③海水温変動が幼生加入およびその選択性をどのように駆動するか、という問いを検証した。その結果、2種とも微地形指標への応答は年によって変化し、その変動は海水温と関連していた。一方で、海水温は2種の地域全体の加入総量には大きく影響しなかった。以上より、近年親潮域で頻発する海洋熱波は、大量死を通じた短期的影響にとどまらず、群集集合の初期段階における非即時的影響を通じても群集構造に作用する可能性が示唆された。


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