| 要旨トップ | ESJ73 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S12  3月12日 14:00-17:00 Room E: 京大国際32

地質・土壌の時空間変異がもたらす植物の多様性
Plant diversity driven by geological and pedological formation

青柳亮太(京大大学), 阪口翔太(京都大学人間・環境学研究科)
Ryota AOYAGI(Kyoto University), Shota SAKAGUCHI(Kyoto University)

古植物学や生物地理学研究から、気候変動が中世代から新生代にかけての植物の進化・多様化に大きな影響を及ぼしてきたことが明らかになりつつある。一方、地質が土壌の栄養塩などを介して植物の多様性に及ぼした影響は未解明な部分が多く残されている。石灰岩や蛇紋岩上の強ストレス環境に適応した植物種が存在することは古くから認識されているものの、その詳細な適応メカニズムや、より広く地質の時空間的多様性が植物にとってどのような選択圧となっているのかは十分に理解されていない。地質学的な時空間スケールでみると、土壌を生成する母材は極めて多様であり、また母材の風化によって土壌の生物地球化学的性質は大きく変化する。したがって、母材とその風化によって土壌の多様性が生み出され、それらが強い選択圧となって広く陸域植物の多様性を生み出してきた可能性がある。

本集会では、母材や土壌発達による環境の多様性と、それらに対する植物の応答・適応を解明した最新の研究例を紹介する。系統樹レベルで広く地質の影響を解析した例から、種内変異と適応形質を扱った例など、幅広い進化スケールでの研究を対象とする。また特に最新の遺伝子解析が、多様な土壌に対する植物の適応機序を理解する上でどのように役立つのかも議論したい。

コメンテーター
伊東明(大阪公立大学)

[S12-1]
趣旨説明&新・旧熱帯林樹木における気候・土壌と関連するニッチ分化 *青柳亮太, 平田萌音(京都大学)
Introduction & Pervasive niche differentiation associated with climate and soil among paleo- and neotropical tree species *RYOTA AOYAGI, Mone HIRATA(Kyoto University)

[S12-2]
石灰岩上の土壌発達がもたらす植物の栄養戦略のバリエーション *芝里万杜(京都大学)
Variation in plant nutritional strategies driven by pedogenesis on limestone *Rimato SHIBA(Kyoto University)

[S12-3]
火山がもたらす土壌リン環境の多様性と広域分布種の適応戦略 *水上知佳(京都大・森林生態)
Volcanos drive soil phosphorus heterogeneity and ecological adaptations of widespread species in Japan *Chika MIZUKAMI(Kyoto Univ. Forest Ecology)

[S12-4]
菌根菌の物質循環機能の多様性と植物・環境との相互作用 *龍見史恵(沖縄科学技術大学院大)
Diversity in carbon and nutrient cycling functions of mycorrhizal fungi and their interactions with plants and the environment *Chikae TATSUMI(OIST)

[S12-5]
これぞまさしく内助の功 ―サワシロギクの内生菌と蛇紋岩適応― *西野貴子(大阪公立大学)
A partner's positive effect: Endophytic fungi promote serpentine adaptation in Aster rugulosus *Takako NISHINO(Osaka Metropolitan University)

[S12-6]
蛇紋岩地におけるキク科植物の種分化ゲノミクス *阪口翔太(京都大学)
Speciation genomics of Asteraceae species in serpentine soils *Shota SAKAGUCHI(Kyoto University)


日本生態学会