| | 要旨トップ | ESJ73 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S15 3月13日 9:00-12:00 Room B: 京大4号31
分子記憶とは、生物個体が過去の環境、生物間相互作用を分子上の修飾状態として記憶することである。現在、最も研究されている分子記憶がDNAメチル化とヒストン修飾に代表されるエピジェネティクスである。広範な生物種でエピジェネティクス研究が可能となったことに伴い、フェノロジー、生活環調節、環境応答、加齢、社会形成、生物間相互作用といった多様な生態学プロセスにおいて、分子記憶が重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。分子記憶は、遺伝子の発現状態を制御し、生物形質に影響を与える。この記憶のおかげで、頑健な季節調節や生活環コントロール、細胞間や個体間の分業、生物間相互作用の制御が様々な空間・時間スケールで成立している。また、ハイスループットな分子解析が可能な現代では、分子記憶を利用した個体群・群集解析も視野に入ってくる。本シンポジウムでは、様々な生物を対象にエピジェネティクス研究をすすめている講演者に、最新の解析やアイデアについて話題提供頂く。エピジェネティクスの研究分野はフィールド研究、ウェット実験、ドライ解析のどれをとっても急速に発展中であり、各研究者はそのぎりぎりのところで奮闘中であるが、誰もが不思議に思う現象を解こうとしている。エピジェネティクスの手法を導入して研究を行っている生態学研究者の数はまだ少なく、本シンポジウムを通して多くの研究者のチャレンジを促したい。
[S15-1]
エピジェネティック分子記憶がもたらす頑健なフェノロジー調節
Epigenetic molecular memory enables robust phenological regulation
[S15-2]
数十~百二十年周期で開花するタケ類の長期開花メカニズムの解明
Elucidation of the long-term flowering mechanism in bamboos with flowering cycles of several decades to 120 years
[S15-3]
ヒストン修飾を介した植物における防御の季節制御
Seasonal control of defense readiness via histone modification in plants
[S15-4]
iPS細胞を用いた霊長類のエピゲノム進化の研究
Study on the evolution of epigenome in primates using iPS cells
[S15-5]
世代を越えるエピジェネティック遺伝とシロアリのカースト決定
Transgenerational epigenetic inheritance and caste determination in termites
[S15-6]
e-エピジェネティックスで切り開く環境DNA研究の最前線
Pioneering environmental DNA research through e-Epigenetic analysis