| | 要旨トップ | ESJ73 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S16 3月13日 9:00-12:00 Room C: 京大4号21
中大型哺乳類は地上部・地下部の生物と栄養的・非栄養的なつながりをもち、植生の摂食や土壌の踏みつけ・掘り起こしなど、生態系の改変インパクトは重大で多岐にわたる。従来の生態系の物質動態に関する研究では、動物のバイオマスが小さいこともあり、その影響は明示的に評価されてこなかった。しかし近年では動物の役割を定量的に評価する動き(zoo-geochemistry)が盛んになっている。ただ、その多くは草食動物の摂食など、地上部での栄養的なつながりに注目するにとどまっている。また、そもそも動物が関与する生態学的プロセスを既存の物質動態モデルに統合する妥当性について、現在もなお議論が続いている。
本シンポジウムでは、これまでのzoo-geochemistryにおける知見と課題を整理した後、日本をフィールドとした最新の野外研究事例を紹介し、森林生態系において中大型哺乳類が物質動態に果たす役割を概観したい。話題提供では、クマ、シカ、イノシシ、中型食肉目、サルの生態・行動と森林の炭素・窒素動態の関連について研究する5名の講演者が発表を行う。これらの発表に対し、植生動態と物質動態を結びつける、動的全球植生モデルの開発者である佐藤永氏(海洋研究開発機構)からコメントをいただく。中大型哺乳類の行動・生態データを活用したモデルの構築・改善の可能性、また、フィールド研究者とモデル研究者のどのような協働が必要か、どのようなデータが求められるか、などについて議論したい。
[S16-1]
中・大型哺乳類による動物死体の消費
Carrion consumption by medium- and large-sized mammals
[S16-2]
枯死木を壊して昆虫を食べるニホンザル:枯死木分解過程における中大型動物の役割
Japanese macaques breaking deadwood to feed on insects: the role of medium- and large-sized mammals in deadwood decomposition
[S16-3]
ニホンイノシシの土壌探索行動は暖温帯林の土壌炭素貯留を変化させる
Wild boar rooting alters soil organic carbon accumulation in a warm-temperate forest
[S16-4]
ヒグマの掘り返しが生態系に与える影響:頂点捕食者の非栄養効果
Ecosystem impacts of brown bear digging for cicada nymphs: non-trophic effects of an apex predator
[S16-5]
シカの踏みつけと採食が森林の炭素・窒素循環に与える影響:九州の事例紹介とレビュー
Effects of deer trampling and herbivory on forest carbon and nitrogen cycles: case studies in Kyushu and global review