| | 要旨トップ | ESJ73 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S23 3月13日 14:00-17:00 Room A: 京大4号30
近年、Nature-based Solutions(NbS:自然を活用した社会課題の解決策)は、生物多様性条約や気候変動枠組条約などの国際的な条約において重要な概念として位置づけられており、日本の「生物多様性国家戦略2023-2030」においても重点的に推進すべき項目として明記されている。NbSは、生態系が有する機能を活用し、気候変動への適応・緩和、災害リスクの軽減、生物多様性の保全、地域の持続可能な発展など、多様な社会的課題の解決を図る取り組みであり、近年では企業や自治体からの関心も高まっている。
NbSを効果的に推進するためには、自然がもたらす恩恵と災いの両側面を適切に把握し、課題の特性に応じた空間スケールで計画・実施を進める「ランドスケープアプローチ」が重要であると指摘されている。ランドスケープアプローチによるNbSを効果的に進める上で、河川や湖沼の流域(watershed)は、治水、水質管理、生物多様性保全など、複数の環境課題を統合的に扱う上で適切な空間スケールとされる。しかし、自然の基本単位である流域は、行政区や社会的な管理単位とは必ずしも一致しないため、実践にあたって制度的・社会的な課題が生じやすい。世界的には、英国で展開されているCatchment-based Approachのように、流域単位で多様な主体が連携し、科学と社会をつなぐ取組みが進展している一方で、日本ではそのような枠組みの整備はまだ途上にある。
本シンポジウムでは、環境研究総合推進費プロジェクト「気候変動適応と緩和に貢献するNbS―流域スケールでの研究」および内閣府SIP「魅力的な国土・都市・地域づくりを評価するグリーンインフラに関する省庁連携基盤」で進めてきた印旛沼流域(千葉県)を対象とする研究と実践を中心に、生態学と工学の両面からの話題提供を行う。それを踏まえ、NbSを支える研究における課題と、社会実装における制度・協働の課題について議論する。
[S23-1]
ランドスケープアプローチの意義と課題:流域スケールのNbSに向けて
The Significance and Challenges of the Landscape Approach: Toward Watershed-scale Nature-based Solutions
[S23-2]
湧水を基盤とした湿地再生による谷津の生物多様性保全—局所から景観スケールまで—
Effects of spring-fed wetland restoration on biodiversity conservation in small valleys: from local to landscape scales
[S23-3]
谷津を湿地再生したことによる栄養塩の流出抑制効果
Effect of a restored wetland in a small valley on the control of nutrient runoff
[S23-4]
地形発達過程からみる災害リスクと生物多様性保全
Disaster Risk and Biodiversity Conservation from the Perspective of Geomorphological Development
[S23-5]
遺伝的アルゴリズムを用いた谷津ダム運用方法の最適化
Optimization of Yatsu Dam Operation Using a Genetic Algorithm
[S23-6]
湿地におけるメタンの時空間変動とその制御:NbSへの展望
Spatiotemporal dynamics and regulation of methane in wetlands: perspectives toward nature-based solutions (NbS)
[S23-7]
放棄竹林の管理から生態系の温暖化緩和策へ寄与を考える
Considering contributions to climate change mitigation through the management of abandoned bamboo forests
[S23-8]
NbSの社会実装のための3次元モデルの活用:ビジョンの共有がもたらすもの
Application of 3-dimetional model for social implementation of NbS