| | 要旨トップ | ESJ73 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S24 3月13日 14:00-17:00 Room B: 京大4号31
我々が観察対象にしている生態系は、過去の気候変動や人間活動、そしてそれらの相互作用によって形作られた歴史的産物である。現在の保全管理における課題の解決を図る上でも、歴史的背景の理解は不可欠である。近年、日本を含む温帯域では、歴史的視座を踏まえた保全管理が実践されるようになってきた。半自然草地の保全活動に代表されるように、過去の人間活動が生物多様性や生態系機能に与えた影響を考慮した取り組みが進んでいる。一方、熱帯地域では、こうした歴史生態学的アプローチに基づく保全管理は始まったばかりである。熱帯雨林は原生的な自然として扱われがちだが、実際には長い年月にわたり人間活動の影響を受けてきた地域も多い。伝統的な焼畑農業や狩猟採集、森林資源の利用が、現在見られる森林の種組成や構造を規定している可能性がある。こうした伝統的な利用形態や文化は、保全管理上の課題を深刻化させることもあれば、解決の糸口となることもある。いずれにしても、歴史的な時間軸を無視した保全管理は不可能である。本シンポジウムでは、熱帯地域で豊富なフィールドワーク経験を持つ演者が、歴史生態学の視点から熱帯雨林の保全管理を議論する。①伝統的な人間活動が生態系をどう改変してきたか、②それが現在どう変化しているか、③伝統的な利用形態や文化(在来知)は保全管理上の課題にどう関係するか、という三つの論点を中心に、熱帯雨林における歴史生態学研究の重要性と展望を共有したい。本シンポジウムの発表の一部は、総合地球環境学研究所Fashloksプロジェクト(RIHN14210169)の成果である。なお、竹内やよい(大阪公立大学)の発表「ボルネオ森林断片化景観における集落保護林の役割-社会-環境相互作用と今後の展望」は事前録画で行う。
[S24-1]
アフリカ熱帯雨林のマルチスピーシーズ歴史生態学
Multi-species historical ecology of African rainforests
[S24-2]
熱帯雨林の野生肉狩猟:技術・管理・知識の歴史的変遷
Wild meat hunting in rainforests: Historical shifts in techniques, management and knowledge
[S24-3]
アフリカ熱帯雨林における狩猟残滓を介した人間とスカベンジャーの相互作用
Human–scavenger interactions mediated by hunting remains in African tropical rainforests
[S24-4]
アフリカ熱帯の「半自然草地」:中大型哺乳類の多様性と季節移動
Semi-natural grasslands in tropical Africa: large and medium-sized mammal diversity and seasonal migration