| 要旨トップ | ESJ73 自由集会 一覧 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W09  3月12日 17:15-18:45 Room A: 京大4号30

マイクロコントローラーとUAVが切り拓く植物フェノミクス研究の新展開
Recent advances in plant phenomics pioneered by Microcontrollers and UAVs

杉浦大輔(名古屋大学), 宮沢良行(琉球大学)
Daisuke SUGIURA(Nagoya Univ.), Yoshiyuki MIYAZAWA(Ryukyu Univ.)

植物を対象とした野外の生態学研究において、長期間・高頻度・多地点での環境および形質データの取得は、依然として多大な労力と経費を要する課題である。気候変動による環境変化に対する植物の応答を正確に理解するためには、個葉から生態系までの様々な時空間スケールで生命現象を捉える新たな計測技術が必要である。

この課題に対する強力な解決策として、Arduinoに代表される安価で拡張性の高いマイクロコントローラーや、UAVを駆使した植物の生育モニタリングやフェノタイピングが近年普及しつつある。オープンソースのデバイスの登場は研究者自身が目的に応じてカスタマイズした計測機器の開発を、広域の空間構造の評価が可能なUAVは植生構造の定量的な評価を可能にし、生態学研究に新たな潮流を生み出している。

本企画では、これらの技術を用いた農地から森林までの多様なスケールにおける先駆的な研究事例を共有し、今後の展望を議論する。具体的には、マイクロコントローラー制御の自動栽培管理システムや、Sap flowセンサー、呼吸チャンバー、光学センサー等による生理学特性や成長量の遠隔モニタリングなど、デバイス開発に立脚した研究を紹介する。さらに、UAVを用いた森林における樹冠形態評価や、圃場における作物の表現型解析システム開発など、リモートセンシング技術のフェノタイピングへの応用事例も取り上げる。

これらの発表を通じて、参加者が自身の研究に新しい技術を導入する際のヒントを得ることも本集会の目的である。植物生態学、農学、森林科学の研究者はもちろん、Arduinoを用いたデバイス開発、リモートモニタリング、フェノタイピングといったキーワードに興味を持つ異分野の研究者や学生の積極的な参加を歓迎し、分野横断的な議論や共同研究へとつながる場としたい。

コメント1:「農業生態系におけるフェノタイピング」郭 威(東京大学)
コメント2:「新たな計測技術によって広がる生態学」小野田 雄介(京都大学)

[W09-1]
生育と生理特性の連続・遠隔モニタリングで変革する作物フェノタイピング *杉浦大輔(名古屋大学)
Innovating crop phenotyping through continuous and remote monitoring of growth and physiological traits *Daisuke SUGIURA(Nagoya Univ.)

[W09-2]
計測機器のカスタマイズで変わる屋外の蒸散観測 *宮沢良行(琉球大学)
Beyond transpiration measurements under restrictions -introduction of customized monitoring systems *Yoshiyuki MIYAZAWA(Ryukyu Univ.)

[W09-3]
UAV-LiDARによる樹冠構造の多個体フェノタイピング *亀井啓明(京都大学)
High-throughput phenotyping of canopy structure using UAV-LiDAR *Hiroaki KAMEI(Kyoto Univ.)


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