| | 要旨トップ | ESJ73 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W10 3月12日 17:15-18:45 Room B: 京大4号31
地球上のほとんどの生態系では、光、温度、潮位などの環境条件が周期的に変化している。これらの周期的な環境変化に適応進化する過程で、多くの生物が内在的な時計システムを獲得し、自身のリズムを環境サイクルと同調させてきた。生物がつくりだす自律的なリズムは「生物リズム」とよばれ、その分子機構や生理的基盤について多くの研究が蓄積されている。これにより時間生物学という学問分野が築き上げられ、さまざまな周期の生物リズムの存在が報告されてきた。例えば、昼と夜という24時間周期の環境変化に適応した結果、動物、植物、菌類、藻類など多くの真核生物や一部の原核生物が概日リズムをもつことが知られている。さらに、海岸に生息する生物では潮の満ち引きに同調する概潮汐リズムをもつことや、月の明るさに合わせて生理的な応答や行動を変化させる生物も確認されている。自然界ではこれらの生物リズムをもつ種が環境やほかの生物と相互作用して生物群集が形成されているにもかかわらず、日周や潮汐、月周に従う生物リズムがもつ生態学的な意義についてほとんど理解が進んでいない。近年、時間生物学の進展により、自然条件でも分子レベルのリズムを網羅的に明らかにする研究が進んでいる。さらに、個体内だけでなく個体間相互作用により創出されるリズムについても注目されており、時間生物学と生態学は融合するときを迎えていると言える。
本自由集会では、異なる階層で研究を進める3名の講演者に加え、京都大学の工藤洋氏をコメンテーターとして迎え、生物リズムを軸に、動物から植物まで幅広い生物について話題提供し、時間生物学と生態学の融合による新たな研究の可能性を探る。
[W10-1]
オオバタネツケバナにおける潮汐環境への進出による遺伝子発現リズムの変化
Changes in transcriptomic rhythms between the tidal and non-tidal populations of the marsh plant, Cardamine scutata
[W10-2]
社会性昆虫ミツバチの概日リズム形成と調節機構
Circadian rhythm formation and its regulatory mechanisms in the honey bee, Apis mellifera
[W10-3]
光サイクルが創出する河川食物網構造
Food-web structures shaped by light cycles in stream ecosystems