| | 要旨トップ | ESJ73 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W12 3月12日 17:15-18:45 Room D: 京大4号11
生物の認識機構は自己と非自己、血縁者と非血縁者を区別し、それに応じて生理的・生態学的反応を引き起こす。免疫による感染防御(異種自他認識)、血縁認識に基づく血縁者間の利他行動、社会性昆虫におけるコロニーの維持(巣仲間認識)などはその典型であり、認識機構はあらゆる生物の個体間相互作用を規定する普遍的な形質と考えられている。認識機構に基づく行動・応答は分類群によって多様であり、生態学的背景や進化プロセスは種々に異なると考えられる。
しかし、自他認識の進化に関する理論の多くは、協力のコスト c とベネフィット b のような画一的なモデル設定を採用しており、生物が実際に持つ生理学的メカニズムと行動の多様性を十分に反映しているとは言い難い。さらに、認識に基づく行動がもたらす影響は、種間相互作用といったより広範な生態学的スケールにまで及びうるが、そうした視点はこれまで見過ごされがちであった。そのため、理論モデルの単純化された前提と、実際の生態的相互作用の複雑さとのあいだには、依然として大きな隔たりがある。
本集会ではこの問題意識のもと、これまでの理論・実証研究を整理するとともに、微生物・植物・昆虫を対象にした認識に基づく個体間相互作用の理論・実証研究に取り組んでいる大学院生の研究を紹介する。そして、認識の生み出す進化の多様性とそこに通底する一般性を、理論と実証研究の接続によってどのように解明できるかをコメンテーターの方と議論する。
[W12-1]
病原体が生み出す真菌の同種自他認識遺伝子の驚異的な多様性の進化
The evolution of remarkable diversity in fungi allorecognition genes driven by pathogen
[W12-2]
血縁認識に基づく花サイズの利他的・利己的応答の進化
Altruism or Selfishness: evolutionary conditions of floral behavior in response to neighboring kinship
[W12-3]
人為選抜がもたらした作物の遺伝子型認識の進化と多様な応答
Evolution and Diversity of Genotype Discrimination in Crops Driven by Artificial Selection
[W12-4]
シロアリの北限個体群における巣仲間認識の喪失とそれに関連する生態的要因
Loss of nestmate recognition in a northern peripheral population of a termite and its related ecological factors