| 要旨トップ | ESJ73 自由集会 一覧 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W15  3月12日 17:15-18:45 Room G: 京大総合南11

「湧水生態学」ことはじめ
Spring-fed Ecology: A Beginning

植村洋亮(北海道立総合研究機構), 平野佑奈(国立環境研究所), 宗像みずほ(北海道大学), 中島壽視(東京大大気海洋研)
Yohsuke UEMURA(Hokkaido Res. Org.), Yuna HIRANO(NIES), Mizuho MUNAKATA(Hokkaido Univ.), Toshimi NAKAJIMA(UTokyo, AORI)

 気候変動や土地利用の変化が急速に進行する現代において、生物多様性の維持における空間的レフュジアの役割が改めて注目されている。なかでも湧水環境は年間を通じて水温や流量が安定しており、気候変動の影響を受けにくい環境として特異な生物群集の形成や長期的な生息地としての機能が期待されている。湧水はその成因や立地に応じて多様なタイプが存在し、火山、山岳、里山さらには海底に至るまで、地形や水文学的背景の違いによって物理化学的特性や生物相が大きく異なる。それぞれの湧水環境は、魚類や底生無脊椎動物、微小生物まで、多様な分類群にとってユニークなハビタットを提供しており、進化的・生態的に興味深い対象となっている。また、湧水は自然環境のみならず、人と自然をつなぐ接点としての価値も有している。しかし、湧水の多様性と横断的な価値が認識される一方で、これまで湧水を統合的にとらえるフレームワークは存在してこなかった。その背景には、湧水が局所的かつ分散的に存在することから、研究が個別事例にとどまり対象分類群や地域ごとの知見が分断されてきたという構造的課題がある。本自由集会では、まず、湧水を対象とした多様なフィールド・対象・研究手法の事例を紹介しつつ、湧水に内在する多様性と共通性を俯瞰し横断的な研究の接点を探る。そして、湧水という一見ニッチで局所的な環境の魅力と生態学的な意義を伝えつつ、「湧水生態学」という新たなフレームワークを提示したい。

構成
 はじめに)植村 洋亮(北海道立総合研究機構)
 講演1) 宗像 みずほ(北海道大学)
 講演2) 植村 洋亮・ほか
 講演3) 平野 佑奈・ほか(国立環境研究所)
 講演4) 中島 壽視(東京大大気海洋研)
 総合討論)境 優(国立環境研究所・UCデイビス)
 おわりに)平野 佑奈

[W15-1]
日本産湧水棲貝形虫(甲殻類)の多様性研究 *宗像みずほ(北海道大学)
Diversity of spring-dwelling Ostracoda (Crustacea) in Japan *Mizuho MUNAKATA(Hokkaido Univ.)

[W15-2]
湧水は渓流生態系の普遍的なレフュジアとなるか?局所環境と捕食圧に着目した研究 *植村洋亮(北海道立総合研究機構), 吉野裕生(北海道大学), 山田太平(水大校), 小泉逸郎(北海道大学)
Are spring-fed habitats persistent refugia in mountain stream ecosystems? A study focusing on microenvironments and predation pressure *Yohsuke UEMURA(Hokkaido Res. Org.), Yuki YOSHINO(Hokkaido Univ.), Taihei YAMADA(National Fisheries Univ.), Itsuro KOIZUMI(Hokkaido Univ.)

[W15-3]
湧水性生物に対する土地利用および気候の影響評価 *平野佑奈, 今藤夏子, 伊藤洋, 西廣淳(国立環境研究所)
Effects of land use and climate on the distribution of groundwater-dependent species *Yuna HIRANO, Natsuko KONDO, Hiroshi ITO, Jun NISHIHIRO(NIES)

[W15-4]
沿岸域の水・物質循環における地下水湧出の役割 *中島壽視(東京大大気海洋研)
The role of groundwater discharge in water and material cycling in coastal seas *Toshimi NAKAJIMA(UTokyo, AORI)


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