| | 要旨トップ | ESJ73 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W16 3月12日 17:15-18:45 Room H: 京大総合北25
災害後の自然環境モニタリングは、生態学にとって基礎的かつ貴重なデータを提供してきた。しかし、その調査が被災地社会にとってどのような意味を持つのかについては、十分に議論されてきたとは言い難い。東日本大震災をはじめとする過去の災害では、研究者の学術調査が地域に負担をかける「調査公害」という問題も指摘され、学術的成果がどのように地域へ還元されるべきかが問われてきた。こうした課題は近年、復興科学や社会学においても注目されており、研究の社会的責任や地域との協働のあり方が重要なテーマとなっている。
本集会では、令和6年能登半島地震後に始まった生物モニタリングの動きを紹介するとともに、東日本大震災後に継続されてきた調査事例を交え、災害後調査の意義と課題を多角的に再検討する。特に国立環境研究所 福島地域協働研究拠点の大西悟氏・辻岳史氏から、災害環境学・社会学の視点も踏まえて災害研究の課題と意義、それらを通じて得られる復興実践知について共有いただく予定である。これらの知見は、能登半島地震後に始まった取り組みを展開する上でも重要な示唆を与えるものであり、現在模索されている複数分野の横断的協働と照らし合わせることで、災害後調査のあり方を広い視野から再考する契機となるだろう。最後に、自然によりそう地域づくりの実践と学際的研究に取り組む徳島大学の鎌田磨人氏にコメントを頂く。
生態学的知見の基礎資料としての価値を認めつつ、「その研究は誰のためか?」という根源的な問いをあらためて掲げ、研究の社会的責任と地域還元の仕組みについて考える。本集会を通じて、災害後モニタリングの社会的意義を再定義し、異分野の協働による新たな調査モデルの構築と、創造的復興への展望を示したい。
[W16-1]
「基礎生態学者」からみた災害後のモニタリング研究の意義:東日本大震災を事例に
Significance of Post-disaster Monitoring from a Fundamental Ecologist's Perspective: A Case Study of the Great East Japan Earthquake
[W16-2]
能登の自然調査・普及施設における震災後の取り組み
Post-earthquake Initiatives at Nature Research and Outreach Facilities in Noto
[W16-3]
能登の復興に向けた生物文化多様性の参加行動型研究
Participatory Research on Biocultural Diversity for Noto's Reconstruction
[W16-4]
東日本大震災の経験から:低頻度大規模自然撹乱に対する防災・減災と生物多様性の両立
Lessons from the Great East Japan Earthquake: Balancing Disaster Risk Reduction and Biodiversity under Large-scale, Low-frequency Disturbances
[W16-5]
NbSによる創造的復興のすがた「能登のグリーンインフラ復興を考える研究会」
Creative Reconstruction through Nature-based Solutions: “Noto Green Infrastructure Recovery Initiative"