| | 要旨トップ | ESJ73 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W24 3月12日 19:00-20:30 Room F: 京大国際31
JBON(Japan Biodiversity Observation Network)は、生物多様性の長期的モニタリングや観測データ共有の促進を通じて、科学的根拠に基づく政策立案や保全実践を支えることを目的としたネットワークである。近年、「ネイチャーポジティブ」という概念に代表されるように、生物多様性の回復に向けた社会的関心が急速に高まっている。この潮流の中で、生態系や生物多様性の状態を定量的に把握するための指標づくりや、その標準化をめぐる国際的な議論が活発化している。
そのような指標やモデルの基盤となるのは、生物の分布や行動、生態、季節変化など、現場の観察に基づく自然史的データである。これら「生物を対象とした自然史」の知見は、研究のみならず、政策や社会的な意思決定を支えるためにも不可欠である。しかし、その基盤を支えてきた地域の博物学者や市民調査者の層が、近年急速に薄れつつある。かつて全国各地に存在した動植物の同好会や調査会は、高齢化や会員減少により活動の継続が難しくなっている例も多く、このことは自然史研究を担う人材基盤の脆弱化という大きな課題を示している。
一方で、自然史の文化が途絶えたわけではない。SNSなどのネットワークを通じて「生きもの好き」がつながり、オンラインとリアルを往復する新しいコミュニティが生まれつつある。また、IT技術や自動化・センシング技術の進展は、観察・記録・共有のハードルを下げ、自然史の新たな展開をもたらす可能性を秘めている。
本集会では、こうした現状と展望を踏まえ、「生物の自然史」の未来をどのように構築していくべきかについて、研究者・実践者・市民の多様な立場から議論する。パネルディスカッションおよび参加者との意見交換を通じて、自然史の継承と発展に向けた課題と希望を共有する場としたい。
登壇予定者 三橋弘宗、深澤圭太、横井謙一、高川晋一ほか 司会 西廣淳