| 要旨トップ | ESJ73 自由集会 一覧 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


自由集会 W31  3月13日 17:15-18:45 Room C: 京大4号21

繁殖フェノロジーの“ギャップ”を埋める:受精遅延から探る生物の季節適応
Filling the gaps in reproductive phenology: exploring seasonal adaptation through delayed fertilization

社川武徳(九州大学), 廣瀬草太郎(九州大学)
Takenori SHAGAWA(Kyushu University), Sotaro HIROSE(Kyushu University)

 季節的な環境変動に対する生物の応答(フェノロジー)は生態学における中心的テーマの一つである。特に繁殖フェノロジーは、動物の交尾・出産や植物の開花・結実など、観察しやすい形質・現象を通じて多くの知見が蓄積されてきた。その一方で、交尾・受粉から始まり、出産・産卵・結実で終わるまでの繁殖期間において、野外での直接観察が難しい受精をはじめとする各プロセスが、季節的環境の下でどのように制御され進化してきたのかは未だに解明されていない点が多い。
 「受精遅延」は、交尾・受粉から受精に至るまで数日〜1年以上もの期間を要する現象であり、昆虫から哺乳類、樹木に至るまで、動物・植物を超えた幅広い分類群で観察されている。受精に至るまでの繁殖期間が延びることは、繁殖や成長に不適な冬を乗り越えることに寄与しているという越冬戦略仮説が提唱されており、受精遅延に焦点を当てることで、生物の繁殖戦略がどのように季節適応しているのかを明らかにできると期待される。
 本自由集会では、ブナ科樹木やコウモリ、チョウを対象に、受精遅延について研究している講演者を迎え、理論・実証の両面からの最新の知見を紹介する。これらの知見をもとに、変動する野外環境における受精遅延の制御メカニズムと適応的意義への理解を深めるとともに、季節的環境に生きる生物の繁殖戦略の進化について、分類群の垣根を超えて議論する。

[W31-1]
ブナ科樹木における胚珠発達の分子フェノロジー:受精タイミング制御機構の解明 *社川武徳(九州大学)
Molecular phenology of ovule development in Fagaceae: elucidating the mechanism controlling fertilization timing *Takenori SHAGAWA(Kyushu University)

[W31-2]
受精遅延するコウモリの精子貯蔵と強制交尾 *佐藤雄大, 杉山稔恵, 関島恒夫(新潟大学)
Mating in the cold: Winter sperm storage in the Japanese little horseshoe bat *Takahiro SATO, Toshie SUGIYAMA, Tsuneo SEKIJIMA(Niigata University)

[W31-3]
キタキチョウの越冬前交尾から探るオスの生活史の多型 *小長谷達郎(奈良教育大学)
Pre-winter mating and the alternative life cycles of males in Eurema mandarina *Tatsuro KONAGAYA(Nara University of Education)

[W31-4]
チョウの季節適応戦略の進化:フェノロジーに対する数理的・解析的アプローチ *廣瀬草太郎(九州大学)
Evolution of seasonal adaptation strategies in butterflies: mathematical model and data analysis to phenology *Sotaro HIROSE(Kyushu University)


日本生態学会