| | 要旨トップ | ESJ73 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
自由集会 W37 3月13日 17:15-18:45 Room J: 京大総合北27
この二十年にわたり、個体群・群集動態や生態系機能といった生態的現象と進化との間の相互連関について多くの知見が蓄積されてきた。特に、短い時間スケールで生じる迅速な進化と生態現象間のフィードバック関係については、理論的研究、実証的研究共に大きな進展があり、生態的プロセスと進化的変化の双方向的な相互作用が、生物多様性や生態系機能に重要な影響を与えることが広く認識されるようになってきている。しかしその一方で、現在までの生態－進化相互作用の理解によって、野外生態系の形成や構築、変動を十分に説明するというまでには著しい隔たりがある。この隔たりは何に起因するのか。そして、次に取り組むべき課題は何か。
ここで特に注目するべき要素として「スケール」の問題を挙げたい。具体的には、広域的空間スケールやマクロ進化スケール、さらに異なるスケール間（クロス・スケール）で生じる生態－進化相互作用の理解が依然として不十分である点である。たとえば、迅速進化が関与する生態－進化相互作用においては、時間スケールの一致は重視されてきたが、空間スケール問題(遺伝子流動・局所適応から生態動態を駆動する生物間相互作用までの包括的空間理解や、生態と進化の空間スケールの一致・不一致の実態と意義など)を実証レベルではほとんど取り組むことができていない。これは、群集や生態系機能とのフィードバックとその意義を理解する上では致命的である。すなわち、野外生態系の形成や構築、変動を真に理解するためには、マクロスケールで生じる生態－進化相互作用を体系的に扱う枠組みが必要なのである。
本集会では、こうしたスケールを意識した着眼点を基軸に、さまざまな角度からマクロパターンでの生態－進化相互作用に迫る視点を共有すべく話題提供を行う。そして、その新たな枠組みとして「生態－進化相互作用を基盤とした生態系イノベーション」を提案し、今後の研究課題や展開について議論する。
[W37-1]
生態進化連環における諸問題：なぜ都市進化は重要なのか？
A critique for evo-evolutionary interplay: why urban evolution is matter?
[W37-2]
植物と植食者の相互作用がもたらす群集スケールの収斂進化：屋久島のミニチュア植物群
Assemblage-level convergent evolution driven by plant–herbivore interactions: a case study of miniaturised plant assemblages on Yakushima Island
[W37-3]
ジオ多様性による植物の形質形成：山腹崩壊地における高解像度解析
Plant traits shaped by geodiversity: a high-resolution analysis in landslide sites
[W37-4]
葉脈構造の進化がもたらす広葉樹における気候ニッチのシフトと多様化
Evolution of Leaf venation patterns promotes climate niche shifts and diversification in broadleaf trees
[W37-5]
収斂的共同進化がもたらす生態系イノベーションと展望
Ecosystem innovations driven by convergent joint evolution