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大規模緑化における森林の遺伝的攪乱、生態系への影響

企画者:津村義彦(森林総研)・戸丸信弘(名古屋大学)

概要:  近年、全国で広葉樹植林が盛んに行われている。広葉樹種苗には配布区域の 法的な制限がないため、全国どこからでも入手が可能である。植物集団は長期 的な気候変動に対応してその分布域を変遷させながら生き残ってきている。同 一種でも地理的に遺伝的な違いが生じていることが多い。例えば、ブナ (Fagus crenata)では、核ゲノムにおいて西日本の集団が遺伝的な多様性が 高く、北方の集団ほど遺伝的多様性が低くなる傾向があり、さらに、日本海側 と太平洋側の集団間には明瞭な遺伝的分化がみられる。また、オルガネラゲノ ムでも非常に明瞭な地理的な遺伝構造が存在する。このように遺伝的に異なる 集団を人為的に混ぜてしなうことは、これまでに長い年月をかけて自然が作り 上げた遺伝構造を壊してしまうことになる。そのため異なる環境で生育した種 苗を植栽すると、在来集団への遺伝的攪乱などの影響がでる可能性がある。本 シンポジウムでは遺伝的攪乱の問題点、主要緑化広葉樹種の種苗の配布区域設 定のためのガイドライン策定、実際に由来の異なる種苗を植栽した場合の問題 点などについて講演して頂き、大規模緑化における遺伝子攪乱問題及びその対 策について議論する。