概要:
このシンポジウムでは撹乱をキーワードに分類群を超え,生態学の新たな理論枠の提示を目指す.アリ,サンゴ,そして植物の7割をも占めるとされるクローナル植物には共通性がある.それは保全上の重要性と,一旦定着すれば移動が困難な超個体であることである.動けない制約ゆえ,撹乱に対して共通する適応戦略が進化している可能性がある.本シンポは以下に例示した基礎・応用的問題群を撹乱への応答と群集への効果という文脈で整理を試みる.(1)外来種侵入でみえる群集理論の新側面(潜在ニッチの似た超個体が在来種ではなぜ多種共存?),(2)外来種の撹乱環境依存性の理由,(2)撹乱が生物多様性と生態系機能に与える影響,(3)外来植物や外来アリの生活史がしばしば進化生態学理論の直感に反する理由,(6)遺伝的多様性が欠如する外来種がなぜ優占するのかなど.これらは多様ながらすべて群集生態学,進化生態学,保全生物学の基本問題に直結している.