概要:
メスそのもの、もしくはメスが必要とする資源を巡るオス間競争と、メスによる配偶者選択は、行動生態学の隆盛当初から今日まで最も盛んに研究が続けられている分野といえる。しかし、その中身は研究の進展と共に変化している。 当初は比較的単純で安定した環境における観察あるいは操作実験による研究が 多かったものの、実際に生物が直面している環境では条件が時空的に著しく変化することも少なくない。最近では、闘争や求愛、選択に伴う利益やコスト・ リスクの変化に応じた個体の振る舞いに関する報告が目につく。本シンポジウムではそのような研究が多い分類群の1つ、シオマネキ類における最近の動向を中心に紹介する。また、野外において精子不足が生じている種におけるオス・メス間の駆け引きや、巣穴を巡る闘争で先住効果がない種における資源の価値と闘争行動との関連についても話題提供する。そして、野外におけるオス間競争とメスによる配偶者選択の実情および今後の展望について議論したい。