| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-01

キシャヤスデの2008年度大発生ーその状況と問題点ー

藤山静雄、平田歩(信州大理生物)

キシャヤスデは8年周期で大発生する。演者らは昨年の本大会で、長野県中信地方の一部で7齢幼虫と成虫が2007年度に大発生したことを報告した。その際、翌年は7齢幼虫が成虫になるので、より広い地域で大発生し群遊(多くの個体が地上を徘徊すること)が大規模に見られるだろうと予想した。この予想に基づき2008年度は長野県中信地方を中心に9月初めより11月にかけ大発生の予想される地域で調査した。9月初旬の調査では、群遊は霧ヶ峰地域の一部ですでに始まっていた。これらの個体にはまだ体色が充分発色しない若い個体が混じっていた。なお、現地での聞き取り調査では、早い所では8月下旬より始まっていたとのことである。その後、9月後半にかけて群遊の地域は広がり、蓼科、車山スキー場周辺、霧ヶ峰北方の一部地域、扉峠、清里など中信地域の広い地域で見られた。この群遊はすべて成虫によるものであったが、ごく少数の7齢が混じっていた。しかし、2007年度、7齢個体の群遊が広く見られ話題となった長野県自然保護センターを中心とした霧ヶ峰忘れ路の丘地域では、この時期に成虫の群遊は予想外にほとんど見られず、結局11月末まで群遊は見られなかった。1976年の大発生時には10月に入り大規模な群遊が観察されたが、今回は、10月に入って群遊は急速に終息していき、中旬以降、群遊はわずかにしか見られなかった。2008年度は成虫の大発生自体は見られたが、長野県内で広範囲かつ大規模な群遊が見られることは比較的少なく、群遊があった場合も、かなり早い時期であった。10月は比較的気温が高く活動に十分な温度であり群遊が予想されたのに、結果は予想から外れた。何故だろう?この点を解明するため、過去の大発生の状況や、ヤスデの生理生態的反応、気象データ等を基に考察を加える。なお、群遊中の個体及び土中生息の個体を採集し、飼育を行ったのでその結果についても報告する。


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