| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G1-03

炭素・窒素安定同位体比を用いた浅い富栄養湖伊豆沼の底生動物の餌資源解析

安野翔(東北大・院・生命),鹿野秀一(東北大・東北アジア研),嶋田哲郎(伊豆沼内沼環境保全財団),進東健太郎(伊豆沼内沼環境保全財団),*菊地永祐(東北大・東北アジア研)

水圏の底生動物の多くは堆積物食者や懸濁物食者で、食物の内容からはデトリタス食となる。デトリタス中には、起源不明の不定形有機物や動・植物の遺体、微生物体も含まれ、消化管内容物をみても、何を同化しているかは分からない。そのため、近年炭素や窒素の安定同位体比を用いた解析がなされてきており、底生動物各種について、その餌資源の個別的なデータは集積してきているが、湖沼の底生動物群集全体を対象とした研究はまだ少ない。本研究においては宮城県北部に位置する伊豆沼を対象地として、底生動物各種の餌資源を炭素・窒素安定同位体比を用いて調べた。その結果、湖心部より採集されたユスリカ類幼虫やイトミミズ類は堆積有機物よりも小さいδ13C(炭素同位体比)値を示し、しかも個体毎の違いが大きかった。その中でイトミミズ類とアカムシユスリカのδ13C値は-34〜-26‰の範囲で個体間の違いが比較的に小さく、水中から沈殿してきたδ13C値の低いPOMを同化することで説明ができる。しかし、オオユスリカとモンユスリカ属の1種はさらに低いδ13C値を示す個体が多く採集された。メタンは、δ13C値が-80〜-60‰と低く、それを炭素源とするメタン酸化細菌をオオユスリカとモンユスリカ属の1種が摂食することで、低い炭素同位体比を示したと考えられる。巣穴を観察したところ、オオユスリカとモンユスリカは内壁に酸化層をもつU字形の巣穴を作るのに対し、アカムシユスリカとイトミミズ類はこのような巣穴を作らなかった。メタン酸化細菌は底泥の酸化・還元界面で増殖するので、巣穴の構造がメタン酸化細菌の同化と関連があることが示唆される。


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