| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-106
2世紀以上に渡って、植物‐送粉者群集においては特定の種とのみ相互作用する特殊化(specialization)が多く見られると考えられてきた。 しかし、近年の研究で、多くの植物種は、様々な送粉者種によって訪花される一般化(generalization)の傾向を示す。Vazquez and Aizen (2003,2005)は既存の植物‐送粉者群集データにみられるパターンを、植物‐送粉者の相互作用がランダムに起こること仮定した帰無モデルの予測と比較し、互いが相互作用する種の数はそれぞれの種の出現頻度だけで説明できることを示唆している。また、伝統的に重要だとされてきた花と送粉者のフェノロジー・形態の一致は相互作用の有無に大きく影響しない可能性があることも示唆している。彼らの帰無モデルではそれぞれの種が相互作用する種数のみを取り扱い、個々の相互作用の強さについて検討していなかった。また彼らの研究では既存の群集データを用いて解析が行われていたため、季節性や花・送粉者の形質についての詳しい検討がなされていなかった。
そこで本研究は、相互作用頻度と相互作用種数の相関だけでなく相互作用の強さや季節性を考慮した帰無モデルを開発し、異なる二つの植物―送粉者群集でみられた個々の相互作用の強さが帰無モデルで説明できるのか、花と送粉者のフェノロジー・形態の一致が相互作用の強さに影響をあたえうるのかについて検討を行った。解析は、京都市北区の深泥池と宝塚市西谷地区の水田の二つの生態系の植物―訪花者群集の調査データを用いて行った。
その結果、花と送粉者の相互作用の約半数が帰無モデルで予測されるよりも有意に強いことが明らかになった。またその有意に強い関係を生み出している要因として花と送粉者のフェノロジー・形態の一致が重要であることが見えてきた。