| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-111
栃木県北部の高原山のブナ・イヌブナの優占する山地帯林において、2000〜2008年の9年間にかけてブナ・イヌブナの個体ごとの着花調査を双眼鏡を用いた観察により行い、両種の着花におけるサイズ依存性を明らかにした。この9年間で、一度でも着花した個体を着花ありとし、着花の有無と幹あるいは萌芽幹の胸高直径(DBH)との関係をロジスティック回帰分析を用いて解析した。この解析においては95%の確率で着花が見込めるDBHを算出し、このサイズ以上の個体を繁殖に達したとみなした。解析結果、ブナでは48.56cm、イヌブナでは23.09cmであった。また、ブナ・イヌブナ両種の9年間の各個体における最大着花度とDBHとの関係を、多重ロジスティック回帰分析によって解析した。ブナ・イヌブナともに、DBHが大きい個体ほど高い最大着花度を示す傾向が見られた。また、ブナに比べてイヌブナは着花開始およびより高い着花度を示すサイズが小さかった。これは、ブナは実生による更新で単独の樹形をとるが、イヌブナは主として萌芽による更新を行い、株立ちするという両種の更新様式の違いによるものと推測された。イヌブナの着花開始サイズがブナより小さいのは、イヌブナは株サイズによって着花に投資する資源量が決まるため、より小さいDBHをもつ萌芽幹でも着花すると推察された。