| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-117
種子散布は植物個体群の空間構造を決定する重要なプロセスの1つであり、鳥による種子散布は低木種や高木種の個体群維持や多くの生態系の植生遷移にとって不可欠である。しかし、林床の光環境は空間的にばらつきが大きいため、林床に生育している低木種の果実を摂食する鳥の行動に影響を及ぼすかもしれない。また、周辺に生育する同種結実個体の密度も鳥の行動や果実の持ち去りパターンに影響を及ぼすことが予想される。さらに、散布後における種子や実生の生存や死亡には光環境が影響するが、種子がどのような光環境の場所に散布される傾向があるのかについてはまだよくわかっていない。そこで低木種ヒサカキを対象に、局所的環境が果実の持ち去りや種子散布に与える影響を調査した。野外調査は愛知県瀬戸市、「海上の森」の0.1haプロットにおいて行ない、2007年および2008年に調査した。果実の減少パターンにはさまざまな傾向が認められ、その減少スピードには初期果実数が有意な負の効果を示し、雌個体密度とrPPFDの効果は有意ではなかった。この結果から、果実数が鳥への果実のディスプレイとして有効に機能していることが考えられる。また、プロット内に設置したシードトラップから回収された種子の約80%が鳥散布されたものであることが確認された。さらに、鳥散布された種子数に対するrPPFDと雌個体密度の有意な負の効果が認められた。したがって、ヒサカキの種子散布に鳥が大きく貢献していること、そして種子は鳥の滞在する止まり木によって多少被陰された場所へ散布されるものの、母樹から離れた所へ散布されることによって、発芽した実生の競争による死亡を避けているということが考えられる。