| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-141
牧畜を主産業とするニュージーランドでは,農場からの温室効果ガス排出が全体の約半分を占める。なかでも放牧家畜の排泄物由来の窒素流出およびガス発生には,土壌中の硝酸化成作用を抑制するジシアンジアミド(DCD)の利用とその効果が確認されてきた。しかし,農場全体に適用するには莫大な費用がかかるため実利用にはいたっていない。ここでもし,家畜の排出物が集中する場所が特定可能になれば,それらの場所に局所的に利用することで,低費用で効果的に温室効果ガス排出の抑制が可能になると期待される。そこで本研究では,羊の尿排出行動を監視し,それらに与えるであろうと思われる外的要因から圃場内の空間的な分布の予測を試みた。調査は,ニュージーランド北島(南緯38度43分,東経175度38分)の放牧草地(2.83 ha)で実施した。放牧家畜の尿排出行動を監視するため開発したGPS+尿センサーシステムを,夏季5日間(2006年12月1-5日),羊20頭(3齢,Landmark Romney ewe)に取り付けた。羊の尿排出場所の推定は,草情報と地理的要因(標高など)を独立変数としたGeographically Weighted Regression(GWR)を用いた。羊の尿排出場所は,放牧期間中に羊が多く利用した場所,圃場内の水飲み場付近と北西側に多く見られた。尿排出が集中する場所については,羊の空間分布に影響するであろうと思われる環境要因から推定が可能であろうと思われた。これら羊の空間分布に影響する要因のうち,本研究のような短期間の放牧行動パターンには,標高と傾斜といった地理的要因が大きく関与していると示唆された。