| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-151
カバキコマチグモは単子葉植物が繁茂する草原に棲息する年一化性のクモである.交尾を終えたメスは植物の葉を折り曲げて産卵用の巣(産卵巣)を作るが,この産卵巣はススキなどの植物の特定の株に多く見られる傾向がある.そこで,産卵巣の分布特性について検討した.
北海道札幌市近郊と神奈川県相模原市に調査区を設け,そこに生育する植物について,一株当たりの巣の分布を,IB指数を用いて判定したところ,集中分布である事が示唆された.次に,この分布を二項分布で示される分布型と比較した結果,負の二項分布と有意に適合した.
さらに,巣間の距離を考慮した場合の巣の分布様式について検討するために,巣の位置を平面上に座標として投影した後で,任意の巣からある距離範囲に含まれる巣数を全ての巣について計測し,L関数を用いて分布を解析した.その結果,ある巣からの距離が半径約0.2m以上で巣は集中分布をする傾向がみられ,その距離が半径1~2mでは集中分布の傾向が安定した.このことから,一つの巣のパッチは半径1~2mであることが示唆された.
巣が作られている株の分布様式を明らかにするために,調査地の株の位置を平面状に座標として投影し,random-relabelling検定を用いて,全ての株に対する巣がある株の分布を検討した.その結果,北海道では,ある株からの距離が半径1〜1.5mで,巣がある株は集中分布をすることが示された.しかし,それ以外の範囲ではランダム分布であった.一方,神奈川では,巣がある株はランダム分布をする事が示された.
以上から,本種の産卵巣の分布様式は集中分布であることが示され,半径1〜2mのパッチを形成することが示唆された.また,巣がある株の分布は北海道では一部の範囲で集中分布が見られたが,神奈川県ではランダム分布であった.