| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-160
北海道の森林は19世紀後半からの集約的な土地開発政策に大きな影響を受けてきた。本研究では知床半島岩尾別・幌別台地の森林植生に影響を及ぼした社会的要因と土地利用変化の関係を既存の文献によりまとめた。農地開発による森林伐採や牧草地の放棄、植林運動は社会的環境の変化と共に起こっており、土地利用政策の失敗が地域的な放棄地を発生し、自然保護運動への転換が植林運動につながっていることが示唆された。さらに植生の体系的変化の抽出と定量化を目的に過去57年間の植生変遷図を作成し、植物被覆変化のパターンを明らかにした。これまでの歴史的背景から3つの土地利用ステージを定義し(Stage I. 開拓期;1947-1968年、Stage II. 放棄期;1968-1978年、Stage III. 植林期;1978-2004年)、各ステージにおける植生被覆変化について解析した。各Stageにおける植生カテゴリー間の面積変化を表す推移度数表から面積の増減を示すGainとLoss値を求め、変化がランダムに起こった場合の期待値と観測値との比較から体系的変化を抽出した。その結果、開拓期では自然植生である針広混交林から広葉樹林、ササ地、牧草地への転換が抽出され、放棄期および植林期では牧草地から針広混交林への一連の植生回復過程が抽出された。しかしササ地から広葉樹林への転換は少ないことからササ地面積は増加しており、植林期では針葉樹林地に転換されていた。また特に現象が顕著なものとしては開拓期における広葉樹林からササ地への転換やその後の一連の植生回復過程であった。