| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-497
変温生物では環境温度(T)と発育速度(Rd)、または成長速度(Rg)との間に一定の関係がある。ここで、発育期間をD、成体重をMとすると、Rd = 1 / D, Rg = M / Dでと定義される。環境温度をx軸、速度をy軸としてグラフ化すると、中程度の温度域では、RdとRgはそれぞれ温度に比例して増加する直線によって近似される。温度-発育速度直線の傾きの逆数を発育有効積算温度(Kd)、x軸切片の温度を発育0点(T0d)と本研究では定義する。同様に、温度-成長速度直線の傾きの逆数を成長有効積算温度(Kg)、x軸切片の温度を成長0点(T0g)と定義する。すると、TとRd, Rgの関係は、以下の式で表すことができる。
1 / D = Rd = (1 / Kd) T - ( T0d / Kd )
M / D = Rg = (1 / Kg) T - ( T0g / Kg )
この式を変形すると、以下のように表される。
Kd = D ( T - T0d )
Kg = ( D / M) ( T - T0g )・・・(1)
このように、温度-発育速度(または成長速度)の関係はKd(またはKg)とT0d(またはT0g)によって決定される。これらのパラメータは各生物種、個体群によって異なっており、温度定数と呼ばれる。温度定数は環境温度Tに適応して進化してきたという観点から成されてきた研究は多い。しかし、(1)式を見ると、発育期間Dに対して選択が働くことによっても温度定数が変化しうることが示唆される。
従って、本研究では発育期間に対してアズキゾウムシを一定の温度で累代飼育し、発育日数の短い系統と長い系統に分断化選択をかけ、温度定数がどのように変化するか検証を行った。