| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-598
アライグマ(Procyon lotor)はその旺盛な繁殖力や食性の幅の広さ、天敵がいないことなどの理由により日本各地で生息が確認されている。このため各自治体では外来生物法に基づいた防除実施計画を策定し、生態系保全、農林水産業・人の生活被害の軽減・解消などを目的としてアライグマの積極的な捕獲を行っている。本研究の対象地である神奈川県では、各市町村が独自に対策を行い、県は財政的・技術的支援をする体制となっている。現状の体制の問題点として、防除実施計画では根絶を対策目標としているが、市町村間の連携が不十分であり、目標達成のための県レベルの計画的な捕獲が行われていないことが挙げられる。現在の捕獲技術ではアライグマをとり尽すことは難しいといわれていることから、当面の対策目標として封じ込めや低密度管理などの検討も望まれている。そこで本研究では、空間明示型個体群動態モデル(SEPM)を構築し、対策目標別に複数の管理方式を用意して数値実験を行い、指標を用いて評価することにより不確実性に対して頑健な管理方式を検討することを目的とした。
SEPMは空間情報と個体群動態モデルの2つの要素からなる。神奈川県をメッシュで区切り、空間情報としては各グリッドにアライグマの生息適地、初期個体数などを入力した。また、個体群動態モデルではアライグマの生活史として繁殖期と分散期を想定し、死亡は年中起きているものと仮定した。さらに捕獲については対策目標別にワナの空間配置のパターンを変えた管理方式を複数用意し、確率的にワナにかかると仮定した。そして個体群動態モデルの結果をもとに分布グリッド数や総努力量などの指標を計算し、用意した管理方式の中で最適な管理方式を提示した。本発表では、選択された管理方式の現実の実行性について議論する。