| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA2-599
これまでに行われた研究によると、特定外来生物に指定されているアメリカミンクは水域を主な生息域とし、本邦の在来種であるエゾクロテンは森林を主な生息域とする種であるとされ、主に利用する環境が異なるとされていた。しかしながら、北海道鶴居村温根内地区にて行った糞DNAを用いた種判別の結果から両種が同所的に生息していることが明らかになった。そこで本研究では、同所的に生息する2種の利用する環境を確かめることを目的とし、環境と糞採取数には有意な偏りが見られるのかを確かめた。
調査手法として、調査地の環境を4つの環境タイプ(河原、低層湿原、高層湿原、ハンノキ林)に区分した地図を、踏査、航空写真および北海道環境生活部の作成した植生データから作成した。次に調査ルートを設定し、調査ルートには20m間隔で地点番号を設定した。地点番号を設定した場所を中心に半径10mの円を描き、その中に含まれた環境タイプの中で、最も広い面積を占めていた環境タイプをその地点番号の環境タイプとした。その後、糞採取場所と地点番号を照らし合わせ、環境と糞採取数の間に有意な偏りが見られるのかを確かめるために独立性の検定を行った。
分析の結果、2種とも環境タイプと糞採取数の間には有意な偏りが見られた(p<0.001)。アメリカミンクは河原の採取数が多く、エゾクロテンはハンノキ林で多くの糞が採取された。環境タイプと糞採取数の間には有意な偏りが見られたことから、同所的に生息する2種は利用する環境が異なることが推測される。しかしながら、今回の糞採取ルートが建造物である木道であったことなどから、更に詳しい行動追跡調査や分析が必要である。