| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-238
随意休眠とは、好適な環境下では世代数を増やし、不適な環境下では休眠することによって適応度を上げる戦略である。これまで,随意休眠は日長と温度に関連付けられて研究されてきた.しかし,夏期に休眠を行う種では,食物の質や量が随意休眠の主要な誘因となる場合のあることが知られている.モチノキの種子捕食寄生者であるモチノキタネオナガコバチMacrodasyceras hirsutumは年2化の生活史を持つことが知られていたが,東京大学の本郷キャンパスと千葉演習林で2007年と2008年に行った調査から,一部年2化の生活史を持つことが明らかとなった.2化する個体の割合は,同一調査地内においても,木ごとに異なっていた.モチノキタネオナガコバチの産卵期間は短いので,化性が日長や温度によって主に制御されていないことを示唆すると考えられた.また,同一木で2化する個体の割合が年によって異なった.モチノキタネオナガコバチは発育中の種子(発育種子)に産卵し,重複産卵は見られない.越冬世代が春に産卵することが出来るモチノキの発育種子の割合,および第一世代が夏に産卵することが出来る発育種子の割合と,モチノキタネオナガコバチの2化する個体の割合には有意な相関が見られた(r = 0.776, p < 0.05, r = 0.884, p < 0.01).これらのことから,モチノキタネオナガコバチは幼虫の餌となるモチノキ種子の量によって化性を変化させていることが示唆された.