| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-242
東南アジア熱帯雨林を中心に分布するオオバギ(Macaranga)属のアリ植物種は、それぞれの種と特異的な共生関係をもつアリ種(主にCrematogaster属)を中空の茎内に営巣させ、共生アリの餌源として栄養体を分泌している。一方、共生アリはオオバギ上のみで生活し、植食者などからオオバギを防衛している。この共生関係は、飛来した女王アリがオオバギ実生茎内に創巣することにより開始し、その後オオバギは最終的に樹高20メートルにも達するほどに成長することが知られている。これまでにアリ植物オオバギの共生系においては様々な研究がなされてきたが、それらのほとんどはオオバギの生活史のごく初期に限られたものであり、オオバギの成長に伴いオオバギ、アリ両者の関係がどのように推移するのかについてはほとんど報告されていない。
本研究では、東南アジア熱帯雨林において様々な個体サイズのアリ植物オオバギを伐倒し、オオバギの葉部、幹および茎部、アリの乾重をそれぞれ求め共生系の全貌を知ることを目的とした。まず、アリ量はオオバギのバイオマスが増大するのに伴い、相対的に減少していくことが明らかになった。また、オオバギ4種においてそれらの傾向を比較したところ、オオバギ各種におけるアリ量はオオバギ成長初期のアリへの依存度の違いを反映しているようであった。先行研究によりオオバギ成長初期に強くアリに依存していることが知られていた種のオオバギは、成長後にも他種に比べてアリ量の減少の程度が少ないことが明らかになり、生活史を通してアリへの依存度が高い可能性が示された。