| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-249
生物多様性の保全を考える上で、植食者に対する植物の防御メカニズムの多様化が重要であることが示唆されている。本研究は誘導防御と開葉様式の関係について明らかにしていくことを目的とした。また誘導防御を考えていく上で、「誘導防御は植食者によってのみ引き起こされるのか」という視点と、「土壌養分、特に窒素は誘導防御にどのような影響を与えるのか」という視点に着目した。使用した樹種は、春葉の次に夏葉を展開させる異形葉型のシラカンバを順次開葉タイプとし、一斉開葉タイプではあるが、条件がよいと2次フラッシュするミズナラと、典型的な一斉開葉タイプのブナの3種を対象とした。堅さの指標LMAはシラカンバで、縮合タンニン量はブナでは有意に、シラカンバとミズナラでは植食者処理によって増加する傾向が見られ、ハサミ切除処理では防御は誘導されなかった。また、葉の窒素含有量は植食者、ハサミ切除処理によって減少した。これにより、3樹種とも物理的な刺激は感知するが、化学的な刺激も伴わないと防御が誘導されない可能性が示唆された。また窒素の影響をみると、3樹種ともに窒素付加によって葉内の窒素含有量が増加し、特にシラカンバで最大であった。総フェノール量と縮合タンニン量ではシラカンバの対照区内で、ミズナラでは対照区内と植食者内で非窒素処理区のほうが増加していた。これは窒素を与えられたことで葉内の炭素含有量が相対的に下がり、炭素骨格の防御物質の相対的量が減少すると考えるCNB仮説と一致した。以上より、当年の光合成産物を用いて葉を展開するシラカンバの方が、貯蔵養分依存型で一斉開葉タイプのブナよりも誘導防御が発現しやすく、開葉様式によって誘導される防御が異なる可能性が示された。