| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-263
環境の空間的異質性は,局所的な種多様性の維持に寄与することが指摘されている.高山や河原,礫浜などの砂礫地では,様々な粒径の表層堆積物が混在することで小スケールの空間的異質性が生じている.また山地林や渓畔林では,様々な粒径の巨礫や転石が表層に露出することで空間的異質性を創出している.これに対し植物種は,その生態的特性により粒径サイズに対するニッチが異なることが明らかにされている.このことから『粒径のばらつきが大きいほど様々な種の生育が可能となり,局所的な種多様性が高まる』という仮説が成り立つ.
そこで本研究では,(1)高山風衝砂礫地,(2)丸石河原,(3)礫浜,(4)砂浜,(5)山地林,(6)渓畔林を対象としてこの仮説を検証した.なお,草本および矮小低木群落ではプロット面積を1m2として全植物種を,森林群落では面積を400〜1000m2として樹高1.3m以上の樹種を調査対象とした.また植物群落では地上部バイオマスに対し,種多様性が単峰形になることが多い.そこで,バイオマスとプロット内の粒径のばらつき度合いを説明変数に,種多様性を目的変数として重回帰分析を実施した.なおバイオマスに対し種多様性が2次近似する立地では,重回帰分析に際してバイオマス値の変数変換を行った.
解析の結果,砂浜を除く全ての立地において,粒径のばらつきとバイオマスの両方が種多様性を説明する有意な変数として選択された.また粒径のばらつきの偏回帰係数は正であり,粒径のばらつきが大きいほど種多様性が高まることが実証された.一方砂浜では,粒径のばらつきは種多様性と相関がなかった.これは砂浜における最大粒径が2mmであり,いずれのプロットでも粒径のばらつきが小さかったためと考えられる.
以上のことから,表層堆積物の粒径のばらつきが空間的異質性を高め,植物種多様性の維持に大きく貢献していることが示唆された.