| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-264
洪水による撹乱は、河川生態系における生物多様性にとって重要な役割を持つが、その影響がさらに顕在する区間と時期が存在する可能性がある。河川の合流点では、流量や流域面積が急激に増加することによって複雑な水流が生じ、洪水が発生しやすい。一方で、モンスーンアジアの河川は梅雨と雪解けによって定期的に増水し、当該時期に洪水が発生しやすい。合流という空間的な要因と、季節的な増水という時間的な要因の相乗効果による洪水の増加は、河川生態系における生物多様性に大きな影響を及ぼしていると予想される。そこで本研究は、河川敷に生育する草本植物を対象として、特定の空間と時間の相乗効果が多様性に及ぼす影響、並びにそのプロセスについて検討した。
調査は兵庫県武庫川水系の11箇所の合流点において、梅雨後(2007年8〜9月:夏)と雪解け後(2008年5月〜6月:春)の2回、合流点の直前と直後それぞれの自然河原で調査を行い、合流前後、春夏間で種数と多様度指数を比較した。さらに合流の前後いずれか一方でしか確認できなかった種、春と夏いずれか一方でしか確認できなかった種の数を比較した。結果は、合流の後で夏季に種数、多様度指数が増加していた。春と夏いずれか一方でしか確認できなかった種の数は、この結果に同調していた。優占種、裸地面積について同様に検討したところ、優占種は合流後に生育範囲が小さくなること、裸地面積は合流後に広いこと、春から夏にかけて狭くなっていくことが示された。
以上から、1)合流後で夏季に種多様性が高まること 2)多様性の高まりに貢献しているのは春より後に侵入(発生)する種であること3)合流後では洪水によって優占種が減り、裸地が形成されることで種の侵入を可能にしていることが示唆された。