| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-268

タンガニイカ湖沿岸域魚類の長期定点調査による群集構造の解明

*竹内勇一(京大・理), 越智晴基, 幸田正典(大阪市大・理), 堀道雄(京大・理)

アフリカ・タンガニイカ湖には、300種近くの魚類が知られていてその多くは固有種である。特にシクリッドは互いに近縁ながら、その形態や生態が細かく分化している。この湖で長期モニタリングを行うことは、複雑な群集構造を明らかにし生物多様性の保全を考える上で重要な情報を与えるだろう。本研究では、長期定点調査によって沿岸岩礁域における魚類群集の特徴を分析し、魚類群集の安定性(持続性)を明らかにする。湖南端の沿岸岩礁域において、永久コドラート(10×40m)を水深2-13mの湖底に設置し、さらにロープで1×1mのメッシュに区切り、その場所にいる魚種と体サイズ(3サイズ)を潜水調査での目視観察によって記録した。このセンサスを13年間(1995-2007年)毎年一回行った。センサスの結果、毎年このコドラートには約2200匹の魚類が見られ、全体でシクリッドが54種とシクリッド科以外の魚種(ナマズなど)が6種記録された。それらのうち、36魚種はほぼ毎年観察された。食性別にみると、藻類食魚(16種)が最も個体数が多く、続いてプランクトン食魚(10種)、デトリタス食魚(4種)であった。その他の食性は、エビ食を除くベントス食魚(11種)、稚魚食を含む魚食魚(9種)、エビ食魚(6種)、鱗食魚(2種)であった。また、水深ごとに優占する魚種は大きく異なっており、浅場では藻類食魚が、深場ではプランクトン食魚が最も多かった。さらに、種数と個体数の経年変化を調べてみると、大きな変化はなく、種の置き換わりはみられなかった。Pianka指数を用いて各年の魚類群集の類似度を算出した結果、毎年0.8以上でこの群集の構造はほとんど変化していないことが明らかになった。これらの結果から、この場所の沿岸魚類群集は、長期的に高いレベルで安定していることが示唆された。


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