| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-270
沿岸の潮間帯岩礁域における魚類相調査は,世界的に数多く行われてきているものの,それらの多くは,地域間や1つの地域のタイドプール間の環境の違いに重点を置いてきた.本研究は,亜熱帯域に位置する屋久島南東部の潮間帯岩礁域においてタイドプールの形状をボックス型(垂直面あり)とカップ型(垂直面なし)に分け,さらにその中のハビタットを上層(プールの縁にあたる水深20cm以内),側面(プールの垂直面:カップ型にはなし),底面の3区域に区分し,計12ヶ所のタイドプールでラインセンサスを用いて底生魚類(イソギンポ科、ヘビギンポ科、ハゼ科、タナバタウオ科)の分布パターンを調査した.その結果,藻類食のイソギンポ科魚類が総記録個体数の半数以上(52.8%)を占め,次いでハゼ科(31.8%),ヘビギンポ科(15.3%),タナバタウオ科(約0.2%)の順となった.これらの底生魚の分布を決める環境要因として,水温と小型藻類の被度に注目したところ,いずれもタイドプール上層で値が高く,底面で低くなる傾向があった.優占グループのイソギンポ科魚類の密度は,これらと同調して上層で高く,底面で低くなる傾向が見出された.さらに同科魚類の密度および相対優占度は,水温および小型藻類の被度とそれぞれ中程度の相関関係があることが示された.これらの結果より,亜熱帯域の潮間帯岩礁域で優占する藻類食のイソギンポ科魚類は,水温が高く,餌となる小型藻類の被度の高い場所を生息環境として選んでいることが示唆された.