| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB1-274
様々な「種」の集合体である群集構造の変動パターンや形成メカニズムの解明には、「種」の個体群の挙動と種間関係が注目される。一方で生態系に対する機能が類似した種グループは「機能群」とよばれ、群集は機能群の集合体としてみなすこともできる。しかし、機能群の変動パターンや形成メカニズムに関しては不明な点が多い。例えば、多様性の緯度勾配は生態学においてもっとも普遍的なパターンのひとつであるが、これは主に「種」レベルでのパターンであり、機能群レベルではこのような普遍的パターンに関してはよくわかっていない。群集の変動は機能群の組成だけでなく、機能群内の種数、種の相対的な出現頻度によっても決定されており、それぞれの変化が群集の特性の変化をもたらしていると考えられる。このため、多様性の変動パターンや形成メカニズムを解明するためには、機能群と種による階層構造を考慮する必要がある。これまで種レベルで扱われてきた多様性の変動パターンに、階層構造を組み込むことで、生態系の特性や多様性の空間変動パターンとそのメカニズムを新たな視点で検討することができると考えられる。
本研究は、太平洋岸の3つの地域(道東、三陸、東京湾)の沿岸域に形成される海草藻場において、植食者群集 (小型甲殻類や巻貝類など)を対象に、その種数−機能群構造関係の空間変異パターンを明らかにすることを目的とした。これら機能群と機能群を構成する種の空間変動パターンの違いから、群集形成のプロセスとメカニズムについて、いくつかの仮説を提唱する。